・イタリア・リミニ(RIMINI:人口15万人、都市圏人口34万人)でのVelocity*は、欧州自転車連盟 (ECF・本部ブラッセル)が1980年から主催する「自転車都市」世界会議で、自転車に関わる官・学・民が主に欧州の都市で毎年集まり、「自転車を活かした都市生活を考える(疋田智氏の表現)」 。*【Velocityは英語では「速度」を指すが、フランス語ではVéloは自転車(Bicyclette)に対して、より親しみのある(チャリンコ?)自転車の別称】。

この5月に閣議決定された第3次自転車活用推進計画審議会座長で運輸総合研究所長の屋井先生、この日は愛媛県ブースで日本酒がふるまわれた為、法被を着用しておられる自転車活用推進議員連盟会長代理の泉健太郎衆議院議員とTBSテレビの疋田智氏。
・ホールには自転車関連業者(自転車そのものだけでなく、シェアバイクのアプリ業者から駐輪ラックまでその幅は広い)の展示ブースが設けられるが、会議場では合計70近い分科会が設けられ、どちらかといえば、自治体で自転車政策を担う参加者たちが「どうすれば、自転車を活用できる都市を作れるか?」「人々のマインドリセット(車から自転車への移動転換)はどのように?」を中心に、15分都市、社会包摂性、コミュニケーション、環境問題、データ活用、マルチモダリティ(複数の移動手段の利用)など多岐に渡るテーマでの発表や議論がある交流の場となる。 4日間の会期中にはバイクパレードがあり、普段着の参加者が何百台もの自転車を連ねて約1時間街中をパレードする。その他様々なテクニカルツアー(自転車で都市整備スポットを回る)やネットワーキング・パーティが企画され、AI時代にはどのような詳細な情報も入手可能なので、むしろ直接政策当事者同志が意見交換し、交流を深める機会を重視している。

Bike Paradeの出発アーチはオレンジ色のゲート(写真・Velocity提供)。会議終了後の午後7時開始だが、この時期、夜の10時くらいまで明るい。
ニューヨークとパリのハイライン
・2027年に開催市となる愛媛県の方々を初め日本からは100人近い参加があり、すでにFB上で多くの報告写真が発信されているので、私は「インフラ整備がなければ自転車都市はあり得ない」という道路空間再配分の観点から、Velocityを見た。会議オープニングのキーノートスピーカーは、今年はニューヨークのハイラインを設計した建築家の一人であるディラー(Diller) 女史で、その1枚目のスライドが「公共空間」であった。

基調講演を行うディラー女史と最初のスライド「パブリックスペース」
・2009年に高架廃線跡地に作られた2.3kmの線状公園ハイラインは、今では年間800万人訪問者を超えるNYCいちの観光名所となり(メトロポリタン博物館は740万人)、文化的な催しや近辺の高額な不動産投資などの紹介があったが、 ハイラインでは自転車走行は認められていないので、Velocityの看板プレゼンとしては、自転車の写真も話題もない画期的ともいえる内容であった。また計画当初には「誰もこんな所には散歩に来ない」と猛反対キャンペーンも張られたが、結果として「グリーンスペースが乏しいマンハッタン南部エリアにおいて平等にNYC市民に緑の散歩道を供給することができ、社会的なインクルージョン効果もあった」とディラー女史が述べていたことが印象的だった。

NYCのハイライン。(特に明記が無い場合は、写真は筆者撮影)。摩天楼を見ながら散策できる空間。南側入り口には美術館やお洒落なフードコート(元来このエリアは食肉を中心とする卸業者が集積していた)もあるので、周辺一帯と合わせて、観光拠点となっている。
・もともとハイラインは、パリで1988年から整備が始まった全長5.8kmの鉄道廃線をプロムナードに転用した緑の線形公園* にヒントを得ているが、なぜがNYCの方が有名になった。パリのハイラインも線路周辺に侵入していた野生植生と、より現代的な景観デザインを組み合わせた、変化に富んだ素晴らしい散歩道だが、NYCのように橋梁をまたいだ建造物を組み合わせ、ホテルや商業施設を開発させるなどの派手な開発はなく、地元の人たちの憩の場として定着した。*(”緑の流れ” Coulée verte, 或いは “植栽した散歩道” Promenade Plantéeとも呼ばれる)

お洒落な家具関連アトリエ・ブティック街となった高架橋の上に走るパリのハイラインでは、かつての線路の跡を残した散歩道もある。

バスティーユ広場から続くパリハイラインの高架遊歩道(1.2Km)の下部構造であるアーケード(以前は家具取り扱いの倉庫群)は、パリ市が修復工事を行い71のブティックに改装された(写真提供・パリ市役所)。

パリのハイラインでは四季の花々が咲き誇る緑豊かな散歩道である。最近になって全行程、完全に歩行者専用になったばかりで、バスティーユ広場からヴァンセンヌの森まで5.8km、高架橋から歩道橋、トンネルから塹壕の中まで通るユニークなウォーキングコースとなった
ボローニャの都市空間再配分
・キーノートスピーカーが「公共空間の再編成」を謳うだけに、分科会セッションでも圧倒的に「道路空間の再配分」をテーマとするモジュールが多かった。中でもリミニを訪れる観光客はボローニャ空港を経ることが多いが、イタリア中部にあるこの美しい歴史ある大学都市の中心市街地の広場は、歩行者専用空間である。その周辺にも2024年から30ゾーン(車の走行速度制限30Kmエリア)を導入した。その結果、「中心市街地における交通事故者数が半減した」と *ボローニャ都市圏共同体の交通政策担当のLargehtti女史は熱弁した。*(ボローニャ市人口は40万人。都市交通計画は人口100万人の都市圏共同体で施策)

ボローニャの歩行者専用道路

人で賑やかな広場には、車の姿は見当たらない

中心広場からは、観光客用ミニEVトレイン出発している

2024年に導入されたばかりのボローニャ市の30ゾーン

分科会で発表されたボローニャ交通局長の、インパクトあるゾーン30キャンペーン用ハンドバック
・同市では57Kmに及ぶLRT導入計画の道路工事が進行中で、都市景観を損なわれているエリアもあるが、とにかく車が好きなお国柄のイタリアで、道路における公共交通導入や歩行者空間化に伴う合意形成の苦労話も披露された。「反対する人は感情的に反対するので、数字を挙げて説明しても意味がない。」として、住民集会は当然で、それ以上に、住民との道路のCoDesignミーティング、City30大使の任命、児童に参加してもらうゾーン30キャンペーンを行うなど、様々な工夫を行政が行ったそうだ。またボローニャ都市圏共同体とその上部組織、エミリア・ロマーニャ州政府との意見調整など、思わぬ所に多くの困難があったとの発言には、出席していた多くの自治体関係者もそれぞれのケースを思い浮かべてか、頷いていた。(続く)

旅行は勿論、仕事で行っても楽しいイタリアの大きな魅力の一つはグルメ。黄色いかたまりはチーズ。壁面の赤い塊は生ハム。

泉議員もリミニでの移動は、LIMEというシェアバイク。Velocity参加者にはPromotion Codeが支給され、大会期間中は無料でシェアバイクは乗り放題となる。個人的な感想だが、高齢者はスマホでアプリが使いこなせないからシェアバイク利用者は少ないと思っていたが、実際にLIMEを利用してみて、個人自転車と異なり非常に重量があるシェアバイクは操作が簡単ではないと感じた。日本のシェアバイクはもっと軽いと想像するが。

ずらりと並んだLIMEの緑色のシェアバイク。多分Velocity用に普段よりも多くの台数が準備された。リミニ市民はシェアバイクよりも、個人保有の自転車利用が多かったような印象を持った。
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